- HOME
- 当院の透析治療実績
始めに
おかげさまで、当院は平成17年5月に開院後、無事に今日まで診療する事ができました。 この間、当院での診療データも少ないながら集積されて参りました。つきましては、以下に平成27年9月時点の当院での透析患者さんの治療成績をお示しします。
当院の透析患者さんの内訳は、総計は100名(男性67名、女性33名)、当院にて透析開始時点の平均年齢は63.6歳(男性62.8歳、女性65.1歳)でした。
原疾患は糖尿病性腎症48例(48.0%)、慢性糸球体腎炎27例(27.0%)、腎硬化症が10例(10.0%)、多発性のう胞腎が3例(3.0%)、その他が12例(12.0%)でした。
以上の年齢、性別、原疾患の分布は、今回比較対象としました日本透析医学会の全国統計調査における2003年透析導入患者さんのものとほぼ同等でした。
透析導入から当院での透析開始までの期間は平均939日、中央値は188日、当院での透析期間の平均は1222日、中央値は1053日、(最短5日、最長3675日)でした。
なお、統計解析ソフトウエアにはEZRを用い、生存率の算出はカプランマイヤー法で行いました。
当院の透析患者さんの生存率
当院の透析患者さんにおける、平成17年から平成27年までの10年余りの生存曲線を示します。
死亡例の取り扱いについては、当院に通院期間中の死亡(3例)に加え、当院通院期間中に心不全、悪性腫瘍や感染症などの合併症を発症して、その治療のために他院に転院し、その後に転院先で死亡した患者さん(10例)も、転院時点で死亡として取り扱っています。
当院の透析患者さんの透析期間1年から10年までの生存率は、以下の通りでした。(データ集計期間:2005年~2015年)
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
生存率 (%) | 96.7 | 94.0 | 90.7 | 84.2 | 84.2 | 84.2 | 73.9 | 67.2 | 67.2 | 67.2 |
全国データとの比較
全国の患者さんの生存率のグラフ(青い曲線)と比較しました。比較対象は、日本透析医学会の全国調査によって10年生存率が公表されている、2003年に透析を導入された患者さんのデータを用いました。(データ集計期間:2003年~2013年)
日本透析医学会
当院の透析患者さんの生存率は、10年間を通じて全国データより良好でした。
具体的な数値は以下の通りです。
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
当院患者生存率 (%) | 96.7 | 94.0 | 90.7 | 84.2 | 84.2 | 84.2 | 73.9 | 67.2 | 67.2 | 67.2 |
全国データ生存率 (%) | 85.9 | 78.5 | 71.6 | 65.3 | 59.4 | 53.8 | 49.0 | 44.1 | 39.9 | 36.3 |
生存率の95%信頼区間での評価
今回当院の透析患者さんの生存率算出に用いたカプランマイヤー法では、日本透析医学会の実施する全数調査とは異なり、観察期間のそれぞれ異なる患者さんを取り扱うために計算結果に一定の誤差が生じます。
そこで、生存期間の95%信頼区間を算出し、グラフに表しました。当院の患者さんの生存曲線(黒の実線)の上下の点線の間が95%信頼区間*です。
* 95%信頼区間:今回の当院の結果はたまたま良かっただけかも知れません。そこで、「当院が同じ治療を100回行うと、その内95回の結果はその範囲に収まる」という範囲を計算し、95%信頼区間として表しています。
なお、この幅が大きいほど、データの信頼性が低下します。
今回の集計結果では、10年間を通じて95%信頼区間の全体が全国データを上回っていました。
具体的な数値は以下の通りです。
年 | 当院患者生存率 (%) (95%信頼区間) |
全国データ 生存率 (%) |
---|---|---|
1 | 96.7 (90.2-98.9) | 85.9 |
2 | 94.0 (86.0-97.5) | 78.5 |
3 | 90.7 (81.2-95.5) | 71.6 |
4 | 84.2 (72.0-91.4) | 65.3 |
5 | 84.2 (72.0-91.4) | 59.4 |
6 | 84.2 (72.0-91.4) | 53.8 |
7 | 73.9 (54.0-86.2) | 49.0 |
8 | 67.2 (44.3-82.3) | 44.1 |
9 | 67.2 (44.3-82.3) | 39.9 |
10 | 67.2 (44.3-82.3) | 36.3 |
死亡率での評価
透析患者さんの死亡率について見ますと、当院の透析患者さんの累積死亡率は、全国データの半分程度となりました。
具体的な数値は以下の通りです。(当院データ集計期間:2005年~2015年/全国データ集計期間2003年~2013年)
1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 | 7年 | 8年 | 9年 | 10年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
当院患者死亡率 (%) | 3.3 | 6.0 | 9.3 | 15.8 | 15.8 | 15.8 | 26.1 | 32.8 | 32.8 | 32.8 |
全国データ死亡率 (%) | 14.1 | 21.5 | 28.4 | 34.7 | 40.6 | 46.2 | 51.0 | 55.9 | 60.1 | 63.7 |
まとめ
今回、当院の透析患者さんの治療成績を集計したところ、生存率については全国データを上回る結果となりました。
しかし、ここでお断りしておかなくてはならないことは、当院は入院ベッドを持たないクリニックであり、治療の対象としている患者さんは、比較的状態の良い通院可能な外来患者さんだけだということです。状態の良くない入院患者さんを多く取り扱っている透析施設と比較すれば、当院の治療成績が良いのは、ある意味当然とも言えます(全国集計では、透析患者さん全体のうち、約10%の方が入院しながら透析を受けています)。
しかし、それでもなお、この結果を見た時に、これは当院の透析患者の皆さんが真摯に治療に取り組んでこられた成果だと強く思わずにはいられません。医療者側がいくら努力しても、患者さんの頑張りが無ければ良い治療結果は得られないのです。
私どもは、今後もより良い透析治療をご提供し、患者さんに「より元気に、より長生きしていただく」ことを目標に、全力で診療に取り組んでまいります。
なお、本ページ作成にあたりまして、私の透析診療の恩師の一人であります医療法人清陽会理事長、 長宅芳男先生 (元、岡山大学医学部第三内科講師) にご監修を賜りました。
この場を借りまして心より御礼申し上げます。